一に整頓、二に整頓、三四も整頓

こんな経験ありませんか?

年末、頭にタオルを巻いて家中を大掃除。新たな年を迎えるにあたって「来年こそは整理整頓された快適な家にする!」と意気込んではみたものの、改めたはずの気持ちも成人の日を境に激減。ひと月もすればダイニングテーブルには山積みになったチラシと飲みかけのペットボトル、部屋の中を移動するたびに床に高く積み上げられた洗濯物をよけ、財布を開けばレシートの束。なぜこうなってしまうのでしょうか?

もしかするとそれは、片付けの本質を知らなかっただけなのかもしれません。

成績が良かった子と悪かった子

一番成績が良かったクラスメイトを思い出してみてください。どんな子だったでしょうか?きっとその子は忘れ物も無く、持って来た教科書はきれいに保たれていたでしょう。机の中やロッカーの中は、いつも整えられていて要らないものは残していなかったでしょう。服の着方もどことなく小ぎれいで、清潔感があったでしょう。話し方も落ち着きがあって簡潔な印象を受けませんでしたか?

反対に勉強が苦手で粗暴な行動が目立つ子はどうだったでしょうか?忘れ物が多く教科書は折り目だらけ、机やロッカーの中は常に丸まったプリントで一杯。言動も荒く、なんでもすぐに諦める傾向が無かったですか?

そして、これは子供に限った話ではありません。冷静な目で職場を見渡してみてください。仕事ができる人は、書類やデータをまとめたり保存したりすることが上手ではありませんか?服装や言動もどことなく清々しく、スマートな印象がします。

さて、それぞれに共通した傾向は果たして偶然でしょうか?

いいえ、違います。

違いをよく見てみるとひとつのキーワードが浮かんできます。それは「整理整頓」です。子供でも大人でも、一定の成績を収めることができる人は、この整理整頓ができているという共通点を持っています。そしてなかなか成績を出せない人は整理整頓ができていない、もしくはやり方が分からないという傾向が見られます。では、なぜこのような違いが生まれるのでしょうか?

少し原因を探ってみましょう。

違いを生む原因

「整理整頓」は、「ことわりを整え、とみを整える」と書きます。理とは物事の筋道、頓とは時間の無い様をさします。要するに、整理整頓とは「大事なポイントを押さえて無駄を省く」という意味です。さて、簡単にできれば良いのですが、これがなかなか難しいのです。いや、正確には”長続きしない”のです。なぜでしょうか?子供たちも含め、皆さんは、整理整頓を努力だけでこなそうとしていませんか?もちろんヤル気はとても大切ですから、そういう意味では努力も必要な要素のひとつです。しかし、整理整頓において、努力よりもっと大切な要素があるのです。

それは「習慣」です。

少し例を挙げてわかりやすくしてみましょう。

例1:ペットのいる家いない家

Aさんの家は猫を飼っています。そしてAさんは、毎朝起きると空っぽになっている猫のお皿にペットフードを入れています。しかし友達のB君の家にはペットがいません。さて、Aさんはこの毎朝のルーティーンを面倒くさいと思いながら行っているでしょうか?そして、毎朝何もしなくていいB君をうらやましいと思っているでしょうか?

例2: 仏壇がある家ない家

もうひとつ。C君の家には仏壇があり、Dさんの家にはありません。はたしてC君は毎朝仏壇に手を合わさなくて済むDさんをうらやましく思いながら日々を過ごしているでしょうか?

答えは、いずれも違いますよね。これらは自分にとって当たり前にある環境であり、習慣になっているため、本人が負担だと感じることはありません。

例3: 大好きなおもちゃ

では、こんな状況はどうでしょうか。E君は電車が大好きでプラレールを自分の部屋いっぱいに作って、いつも眺めながら過ごしたいと思っています。でも、お母さんはインテリアにこだわりが強く、子供が落ち着いて過ごせるよう壁の色や物の配置をレクチャー本で読んだ通りに作ってしまい、子供に「これが正しい」と思えるよう日々言い聞かせています。

例4: 本の並べ方

また、Fさんはディズニーが大好きで色んな本を集めています。でもお父さんは、本棚の景観を良くするため、ほかの本と一緒にし、すべてを背の順に並べ、「この方がきれいに見えるから、本はこうやって並べるものだ」と教えています。

親に何かを言われた時、子供たちはそれに従います。それは、親が教えてくれたことは正しいこと、と脳が判断するからです。親は言うことを聞いてくれた我が子に対し「分かってくれた」と安堵します。しかし、そのほとんどは長続きしません。そして「まだ分かってない!」となるのです。誰しも経験がありますよね。

さて、AさんやC君は毎日続けることが出来ているのに、E君やFさんは長続きしません。そこにはどんな違いがあるのでしょうか?それは、AさんやC君は課されたタスクが習慣化されており、こなすことに難しさを感じないからです。しかしE君やFさんは違和感を努力で克服するよう強いられています。だから続けることが困難なのです。

習慣は続くけど違和感への努力は続かない

習慣の仕組み~なぜ習慣づかないか?~

プロセス

では、習慣とは一体どんなものでしょうか。習慣づけるために努力があってはならないのでしょうか?いいえ、努力は無くてはなりません。問題は、その時に生じる違和感の程度なのです。違和感が大きければ大きいほど、習慣はつきにくく三日坊主を繰り返す割合が多くなります。大人には当たり前の習慣でも、子供にとっては難しいということは多々あります。また、子供たちは大人のような高い知識や深い経験を持ち合わせていません。いきなり大人の価値観で習慣づけようとせず、習慣が身につくまでのプロセスを丁寧に作っていくことがとても重要です。

環境

また、習慣づかないもうひとつの理由として、”習慣づく環境になっていない”ということがあります。Fさんの例では、お父さんがあまりにも見た目を意識しすぎて、ディズニーの本はここにまとめる、という、子供が自ら作り出した習慣環境をわざわざ壊してしまっているのです。本を背の順に並べてしまっては、どこにどんな内容の本が置いてあるかわからず、一度取り出した本をどこに収めるのか、また背比べをしなくてはならなくなり、習慣とは程遠い結果になってしまいます。このように、習慣化を促しづらい環境を改めていくことがとても重要です。

モノごとの習慣化には「プロセス」と「環境」を意識することが大切

習慣の仕組み~どうやれば習慣づくか?~

プロセスを整える

子供の目線に合わせる(できる!ルール作り)

具体的にどうすれば子供たちに良い習慣が身につくのでしょうか。それは、子供たちが取り組みやすい位置からスタートさせることです。高度な習慣化を急いで、そこへ行きつくまでのプロセスをショートカットしてはいけません。E君の場合、まずは親子一緒に思う存分プラレールで遊ぶ必要があります。そして、片づけるとき一定の場所を空け、「この中にかっこよく置いてみよう」という超えやすいハードルを与えるのです。新しい習慣を身につけるのは、大人にとっても難しいことです。いきなり高いハードルを目の前にドンっと置くのではなく、今時点の子供に超えられる低いハードルを用意し、慣れてきたら、また超えられるハードルを与え、少しずつ高くしていきましょう。子供たちは、いつも自分にちょうどいい習慣をこなしていくうちに、結果、高度な習慣を身につけていけるようになるでしょう。

環境を整える

親が率先してやる(行動の当り前化)

また、家庭内を習慣が身につきやすい環境に変えていくことも大切です。そのためには、大人が真っ先に率先してやることです。家の中は、モノが使いやすいようにジャンル分けされていますか?あとで取り出しにくいような無理な収め方をしていませんか?インテリアばかりに気を使って、子供が緊張を生む空間になっていませんか?家族全員がいい頃合いで過ごせるような空間になっていますか?良い習慣を身につけるためには、諦めや思考の停止を作り出す空間にしないことです。家中を良い習慣が身につけやすく、整理整頓が可視化できる場所にしていく。そのことを、まずは親がやって見せ、それが当たり前の光景になることがとても重要です。

整理整頓ができるようになるためには、モノごとの習慣化を身につけることがとても大切です。そのためのプロセスと環境をちゃんと整える。それができれば、あとは子供が勝手に膨らませていきます。

整理整頓で得られる3つの力

整理整頓の習慣化は、子供たちに学習能力の向上をもたらします。もちろん、それだけが学力を伸ばす唯一の理由というわけではありませんが、整理整頓が習慣化している子供は学習能力も高い傾向にあります。それは、いわゆる地頭じあたま」を鍛える次の3つの力が身につくからです。

無駄を無くす力

整理整頓を習慣的に行っていると、”必要なもの”よりも”不必要なもの”が見えてきます。それは、使うもの使わないもの、大事に思っているものそうでないもの、など、日々習慣的に向き合っているから判断できるのです。もし滅多に片づけをしていなかったなら、久しぶりに見たものを使うか使わないか判断はできませんよね。

やり切る力

整理整頓には、その時々に必ず「最後のひとつ」が存在します。これをここに収めたら終わり、といったものです。これが習慣化していれば、最後までやり切って終えるというクセがつきます。

思考する力

整理整頓にはイレギュラーがつきものです。新しくモノが増えたり、場所を移動させなくてはならなかったりすることが起こるからです。その度に、「どうしようかな?」と考えるクセがつきます。考えて出た結論を具現化してみる。それが違っていたなら改善策を考える。それを繰り返すことで少しずつ思考する力がついてきます。

小さなことから始めよう

「三つ子の魂百まで」や「Best to bend while it is a twig」など、子供のころに良い習慣をつける大切さを語ったことわざは国の数だけあります。要するに、古からある人類の課題なのです。今回のコラムを読んでいただき、「よし!今日から全力で向き合おう!」と意気込み過ぎず、まずは目の前にある机の上を、あなたのルールだけではなく”家族目線ルール”で片づけることから始めてみませんか?子供たちはきっとそれを習うでしょう。

そう、これを書いている私も同じように。